根管治療が終了した後に痛みが出ると、治療が失敗した?抜歯かも?!と思うかもしれません。
しかし、痛んだ原因によっては再治療によりもう一度、ご自身の歯で噛めるようになることもあります。
前回の解説で、治療後の痛みの原因として汚れの取り残しを上げました。
しかし他にも原因は考えられます。
それは、歯の中に穴が開いてしまっている場合です。
歯の中は通常、根の先(根尖)の部分に穴があり、生きている歯ではそこに神経や血管が通っています。
通常の歯の根の治療では、歯の頭の方に穴をあけ、そこから器具や洗浄液を使って根の先までお掃除していきます(上の図)。
このとき、歯の根の管の方向と間違った方向に削ってしまい、歯に穴が開いてしまうことがあります。
奥歯は実は非常に見にくい場所です。
ある程度の技術や知識がないと余計なところを削ってしまいます。
あまり余計なところを削ってしまうと、歯の根の管以外のところに穴をあけてしまうことがあります。
このような状態を穿孔(せんこう:パーフォレーション)と言います(下の図)。
以前は穿孔を生じた歯は経過が非常に悪かったのですが、近年、MTAという材料が用いられるようになり、穿孔を生じていたとしてもそれほど経過に影響を与えない程度に治すことができるようになりました。
このMTAという材料は1990年代前半に論文が発表されてから色々な研究が行われ、様々な難しい歯を治療することができるようになってきました。
当院でももちろん、MTAを取り入れております。
様々な処置(穿孔部をきれいにするなど)をしてMTAを用いれば、穿孔を生じても歯を残すことができるようになりました。
しかし、それに先立つ大事なことがあります。それはしっかりと診査し、診断を下すということです。
診査が不十分であったり、歯の解剖学的知識が十分でなかったりすれば正確な診断はできず、結果として残すことができる歯が治療できず、抜歯しなければならなくなります。
大切なことは材料ではなく、歯の解剖学的知識や使用する材料に関する十分な知識、処置に対する技術や十分な時間です。
当院の歯科医師は国内、国外の学会に積極的に参加し知識を深めて、新しい技術、材料を取り入れております。
根管治療で失敗した!とお思いの時や、根管治療後に激痛を生じてしまった場合などにも、一度、ご相談していただければお役に立てるかもしれません。